佳作の味 Vol.2
佳作続きで恐縮ですが、シャツにも佳作がありました。佳作というより駄物? と言われそうなレベルだったりしますが……、まあ読んでやってください。
問題のブツは1970~80s頃のKEY IMPERIAL。つくられた年代からすれば想定範囲内かもしれませんが、ある程度服のことをわかる人が見れば、どこがIMPERIAL? と言いたくなるほどのさっぱりと安手な仕上がり。
全体のシルエット。イカのような裾のシェイプは、縫い時間の短縮のためカーブまでも端折った結果?
まったく巻かれていないメインシーム。ワークシャツとしてはさすがにうしろめたいのか、バックヨークのみシングルでトップステッチを入れている。
100%ポリエスターのプリントラベル。洋服のラベルとしてはもっとも安いテクスチャー。“YOUR ASSURANCE OF QUALITY”=品質保証、とうたっています。
台襟もない襟。
生地の色も違えば高さも違う左右のポケット。なぜかフラップ付き。
限界まで細い“行って来い”カフ・プラケット。
どのシームも巻いていない、ワークシャツとしては、すでにやる気のない基本姿勢から始まって、それ以外の部位も省けるところは台襟までも省く、というコスト削減に関してはかなりアグレッシブな体質。生地に関しても最低ランクのものを使用するだけでは足りないのか、ダイロットの違いによるシェーディング(反違いによる色の違い=袖や身頃、ポケットなどの部位で色が違う=本来は合わせるのが基本)もお構いなしで、これはもう、業界の人が見れば最短、最安でワークシャツをつくるための好見本。言い方をかえれば一度に大量に、かつテキトーにつくることによって初めて出せる味、と言えなくもない。
しかし、困ったもんですが、着た感じはけっこう気に入っています。シェイドの違いが全体にさりげなく退屈でない表情をもたらし、巻かないシームと、糸を限界までケチったシングルニードルによる各部のステッチングも、見た目と着心地の軽さに貢献している。安っぽいスカスカのシャンブレー生地は風通しがよく、いいかげんに縫われた台襟のない襟もクシャっとして涼しい。
自分のまわりには巻きシームやディテールありのコッテリ気味な服も多く、そんな中での涼風というか、違ったバランスを加える役割としての登板回数も多かったりして、気がつけば結構ひんぱんに袖に手を通している……。
人が服を気に入る理由は、計り知れません。(オオフチ)
P.S. 朝飯を買いに表に出て、衝動買いをしてしまいました。またまた……。