無礼物
先日、東京での出来事でした。夜中3時、仕事仲間との酒がすすみホテル近くでタクシーを降りた時間は大体そんな時間だったような・・・。
タクシーを降りると何やら前方には思いっきり腰の曲がった浮浪者がビニール袋を両手に持ち、思いっきり破れた靴を履き、これまた思いっきりガニ股で歩いては止まり、独り言をいっているようである。
後ろ数十メートルを歩いている僕に時折ふりかかる悪臭は鼻を突くなんていうものではなく、深呼吸でもしようものなら倒れる勢いといっても大げさではないくらい。
歩いては止まりを繰り返しているうち、歩道からちょっと入ったビルの入り口で立ち止まり静止している。歩道からしばらく見ていたのだが一向に動く様子もなく、全く聞き取れない独り言を言っている。
相変わらず静止したままだ。
ニューヨークに住み始め、ある程度街に慣れたころ、ホームレスの人にお金を上げてその金でドラッグを買っている現場を見たとき以来、一切そんなことはしなくなった。
上げたお金を相手がどう使おうと僕の知ったことではないけれど、ブッ飛ぶためにあげたんじゃないと思っていたのは若かったせいだとも思う。
酔っていたせいか僕は目の前の男に近づきポケットから千円札を差し出した。 一言だけ。どうぞ。
そしたら訳の判らないことを言い始めた。でも何を言っているかは、さっぱり判らない。僕は千円札を引っ込めるつもりもなく息をとめ立っているだけ。
次の瞬間、僕は愕然とした。その男、ポケットから何十枚とある万札の束を僕に見せ、訳のわからないことを言い続けている。僕は大変失礼しましたと頭下げ、その場を立ち去った。
その晩はその人のことをしばらく考えていました。Don’t judge a book by its coverということわざがあります。あの時、僕に強盗が乗り移ってたらどうなっていたんだろう。
(カツ)