気がつけば長年ブランドをやっていますが、そうなると憶えていない商品の数も相当な数・・・というか私の場合、逆に憶えている物はごくわずかかもしれません(笑)。そんな中で個人的に印象に残っている商品もいくつかあったりしますが、それらは実際に気に入ってよく着ていたものもあれば、気に入っていたけれどあまり着なかったものもあり・・・今回は前者の一枚を紹介したいと思います。

モデル的には#1102 Engineers’ Jacket・・・おそらく2000年前後のものと思われますが、現行品と比べるとサイズ感が違ってかなり大きいですね。でも1993年のデビュー時はこれでなかなか調子良い感じだったのですが、1990年代の終わりくらいから大きいと感じ始め・・・しかし当時のセールスのリクエストもあり、サイズをすぐには変えられず・・・ともあれ、細部のデザインはまだデビュー時と同一ですね。今は#1102も紆余曲折を経てシンプル化の傾向にありますが、こうして今見ると、オリジナルデザインが新鮮に感じられるから不思議ですよね。

懐かしい、大判のポスト君ラベル。グリーンの後にブルーに変更になりましたが、確かその後も気分次第でグリーンも使っていたように記憶しています。ちらっと見えるトリプルチェーンステッチの下糸は、当時は工場の責任者のグッドセンスに任せて組み合わせをアドリブでお願いしていました。なので、生産ロット/時期によって違う組み合わせになっているんですね。この一枚は左からブルー、カーキ、レッドという感じでしょうか。その後多分2007、8年くらいから現在使っているティファニーブルーに統一したと思います。

何が気に入っていたかといえば、この素材。カーキのコーデュロイにブラックに近いダークブラウンのヘリンボーンのプリントが入っています。このような生地は1950年代頃迄はたくさんのメーカーが使っており、特に戦前ものに関しては、 安手なテーラードものなどに多く使われていました。要は、景気の悪い時代にウールの代用品という使われ方をしていたわけですね。なので、当時はウールのスーツ地を模したパターンが多いように思われます。逆に戦後の1940〜50年代ものは、カジュアルウエア全盛の時代らしい楽しいデザインのプリントが多く、用途はまったく違う感じだと思います。

話は変わりますが、私が今気になっている生地は、グレー系にも茶系にも両方合わせられるようなもの。そんなムードで工場をブラブラしていたら、目に付いたのがこの一枚だったというわけですね。

(オオフチ)