物件が決まったら、次は内外装…場所はまだ私の友人が事務所兼倉庫として使っており、内装と床は半分くらい解体してあるという状態…お店兼事務所として使えるようにするには、ほぼ全面的に手を入れないと無理?

 

建物自体の雰囲気は、ユルめの1970年代モダン…でも、お店は違う感じがいい?…個人的に気になっているイメージは、日本にかつて存在したアメリカ…昭和20年代頃に横浜、横須賀をはじめ全国にあった進駐軍相手のカフェーとか、当時の在日米軍基地の様な感じ…しかし、私には白紙から内外装のアイデアが噴き出るような才能はない…ので、ブランド最初のお店である原宿のSmall Storeの内装をお願いした、パシフィックファニチャーサービスの石川さんに連絡をしてみました。彼とは、以前の代理店が運営していた青山のお店のオープニングパーティーでお会いした時に、開口一番 “ここも俺がやりたかったなー” とのお言葉を頂いて以来でした。

 

 

現場を見て頂くと、“大淵くんが借りなかったら、俺が借りるよ”と気に入って頂け、先ほどのイメージの上に、私のかつてのアメリカの職場の環境をインプットしたプランを考えてくれました。縫製工場のインダストリアル感と、アメリカ東海岸のテーラーメーカーの様なイメージ、そして昔の米軍基地などのフレーバーを上手くクロスさせてくれたんですね。仕事で米軍基地に出入りしていた石川さんは、実際に様々な進駐軍の物件を見てきた経験があり、その辺りはまさに石川さんの真骨頂だと思いました。

 

 

石川さんのプランでユニークだったのは、お店部分と事務所/倉庫部分が仕切りで別れていて、仕切りの上半分はガラスになっており、お店から事務所/倉庫が見えるんですね。随分前に行った事がある、シアトルにあるFILSONの直営店を思い出しました・・・当時はカバンなどの小物類は店内に併設した工場で縫っており、その様子がお店からガラス越しに見える造りになっていました。

 

 

石川さんデザインの仕切り壁は気が利いていて、ガラスの下部にはちょうどカウンターの様な出っ張りがあって、ドリンクなどを置けるスペースがあるんですね。その下は木製で、最下部の立ち上がり部にはメタルの蹴っ飛ばしが付いています。これがまた良いアクセントになっているんですね。

 

 

でも、私が石川さんに表現して頂きたかったムードは、実はもう一つあり…それは、私が高校生の頃によく行っていた、世田谷区の経堂にあったDREAD’S(ドレッズ)という名のレゲエ&ブルースバーのイメージ…。

 

 

おぼろげな記憶で恐縮ですが、ビジュアル的には外観は淡いグリーンにペイントされたコンクリートに、ペンキでユルい感じに書かれたお店の名前が照明で照らされて…表から見るとガラス越しにはソテツとボブ・マーレーLIVE!のジャケット、お店に入ると入り口付近ではアメリカ古着も売っていて、つげ義治や永嶋慎二などの貸し漫画もありました。照明はホーローの丸い傘に薄暗い裸電球、そして確か真ん中あたりに一段高くなったDJブース兼カウンターの様なものがあり、それを囲む様に木で作られたテーブルがあった様な気がします。また、古いビル特有のカビ臭く湿気った匂いも魅力的でした。

 

 

彼と打ち合わせをしているうちにわかったのですが、なんと石川さんは当時、高校生ながらそのお店を任されていたんですね! まさに、奇遇…さらにこれも石川さんから聞いて知ったのですが、その店のオーナーは後に劇作家となって活躍された狩撫麻礼(かりぶ・まれい)という方で…とにかく昭和20年代のカフェー調のハコに、1950〜60年代のR&Bと1970年代のレゲエカルチャー、そして1960年代の日本の漫画/劇画文化をハイブリッドしたユニークでファンキーなお店でした。

 

DREAD`Sが大好きだった事を石川さんに話すとプランは一転、かつてのDREAD’Sのフレーバーをググッと注入してくれました。石川さんは当時DREAD`Sのペンキ塗りなども手伝っていたらしく、グリーンの色はこんな感じ、木の色はこうで・・・と、グイグイ進んでいきました。石川さんのディテールですごいのは、木部の材質と塗装へのこだわり・・・まさにアメリカにないアメリカ、日本にあったアメリカという感じの独特で魅力的な質感なんです。

 

 

今回のお店で絶対に使いたい、と思っていたのはアメリカから持って帰った、溶けたアイスの様なデザインのシャンデリア。随分と前にブログでも紹介しましたが、私が小学生の頃に映画やテレビで見た様なストックホルムかコペンハーゲンなど、ヨーロッパのどこかの空港ラウンジにありそうな、私の好みドンズバなもの。

 

 

そのシャンデリアは、今から20年くらい前にニューヨークの田舎のアンティーク屋さんのウインドーで見つけ、でもそのお店は閉まっており・・・その辺りの誰かにオーナーの住所を聞いて家に行ってみたのですが、不在・・・その後何度か電話してみるも・・・不在。止むを得ず、放置→しばらく忘れていました。

 

 

それからまたしばらくして、そのアンティーク屋さんから車で30分くらい走ったところにある別のアンティーク屋さんで、シャンデリアがあったアンティーク屋さんの話をしたら、たまたまその方はそのアンティーク屋さんの兄弟だったんですね。彼曰く、お目当てのアンティーク屋さんのオーナーは釣りが大好きで、時間があればいつも釣りに行っているとの事。道理で連絡がつかないはず・・・とりあえず、その場で彼に電話をしてもらい、破格で交渉成立。無事、送ってもらうことになりました。

 

 

しかし、届いてみると自分のアパートで使うには大き過ぎ・・・なので、工場の倉庫にずっと置いてあったんですね。その後しばらくして偶然同じものの小さいサイズのものを見つけたので、それも買っておきました。そして今回晴れて2個とも設置することが出来ました。(オオフチ)