ここが、映画“TAXI DRIVER”のなかで派手な殺人事件のあった、あの売春ホテルの通りです(13St.の2nd Ave.と3rdAve.の間)。PIMP(ヒモ)役のハービー・カイテルは、この辺りに立ってポン引きをやっていたわけですね。

あれから30年ちょっと経って、いまでは平和な雰囲気を醸し出しています。といっても僕が住み始めた約20年くらい前までは、昼間っからたまにお薬でヘロヘロな売春婦がフラフラしていましたが。本当にここらはそういった場所でした。

話はそれますが、映画でもチラッと写っているこの並びの角にあったHUDSON’SというARMY-NAVY屋(軍物の放出品やGパンなどの作業着を売る店)は、1975年発売の「Made in USAカタログ」(というアメリカ製品を紹介した本)の後ろのほうのページに、当時のアメリカ国内向けのメールオーダーのカタログをバッチリ載せていて、それを読んでいた僕は、ニューヨークに来たらまずここに行かなくては、と思っていました。

そのカタログにはLEVI’SやLEEをはじめとして、SWEET-ORRなんかのワークウエアも出ています。デッドストックが残ってないか? と期待してましたが、最初に行った1987年ですでに改装、アウトドア調に化けた後で、しかも大した物は残っていませんでした。その後、NYの老舗ビンテージクロージングディーラー(70年代から商売している!)で、「昔HUDSON’Sでデッドストックをたくさん買ったよ」という話を聞かされ、そうか、君だったのか! という感じでしたが……。

でも、TAXI DRIVERはSHAFTなんかと共に、自分的にはファンキーなNYのイメージだったので、いま見てもいいビジュアルですよね。というか若い頃、日本でこの映画を見た当時は、髭剃り後もまっ青なトラビス(デニーロ)が、タンカース(ジャケット)をダサい綿ポリのシャツでハズしている感じがシブイ、とか思ってました。

実際のところは、本当に野暮ったいベトナム帰りという設定ですよね? スーツの着こなしなんか、イタリア系というよりも、どことなく東欧っぽいフレーバーさえ漂って……。ハービー・カイテルのほうがリアルタイムにお洒落だし、とりあえずトラビスよりはモテそうですもんね。(オオフチ)