今日の2枚はGジャンです。気が付けば、ここしばらくは個人的にGジャンの登板回数が増えています。

そういったモードに入ると、再び様々なブランドの様々な年代のものが着てみたくなり、クローゼットをひっくり返したり新たなターゲットを狙ってみたりと、独り言的な動きに入っています。

今回はそんな中での2枚です。ブランドはLEE、モデルはご存知101-J。モデル自体が作られた年代としては1940年代から現在までという長いスパンに渡っていますが、このモデルが登場する以前のヘビーオンスのGジャンはLEVI’Sに代表される、フロント左右にプリーツをとったタイプであったことを考えると、この101-Jの功績は大きいですね。その10年以上あとにLEVI’Sもついにプリーツ無しのタイプ(557XX~70505)を出し、その後現在まで脈々と続くGジャンの基本形のようになっている事実を見てもそれはわかります。

Gジャンの原型~旧型にあたるプリーテッドブラウスは前世紀から続く旧式なスタイルで、それはそれで味わいがあり個人的にも好きですが、ネガティブな要素としてはプリーツを留めているステッチがほつれて開いてしまったり、またパターン上フィット的に限界がある点が挙げられます。

LEEの101-Jの場合、プリーツで立体感を出す代わりに曲線を多用した立体的なパターンで対処している点が新しく、セットとなるGパンの最大の特徴といえる人間の体型に沿ったタイトな(いわゆるスラックス、トラウザーに対して)シルエットという点にもピッタリと適合するものとなっています。

といった話はさておき、アメリカ物の良さのひとつに、良くも悪くも個体差が出てしまうという点があると思います。現代で言うところの一般的な品質とはまずは均一性であり、1,000枚つくったら1,000枚が同じように仕上がることが目標となります。

なぜ個体差が出るかと言えば、それはやはり人間がつくっているからで、すべてをオートメーションで行なっているならば話は別ですが、これはある意味避けられないこと。でも自分的にはそういった個体差は現代においては貴重な“味”のひとつだと思っていて、逆にパーソナルな感じが“吉”と出る場合もあり、そのためうちの製品では逆に個体差を尊重しています。まあ、服は精密機械ではないので、要はその人に似合えばいいし、それが愛着につながればなおうれしい、と思っています。

ビンテージの世界、特にワークウエアなどでは現代よりもさらに個体差があったりして、それは同じものを長年つくっていれば至極当然といえます。だから同じブランドの同じモデルでも一枚一枚が違ったりします。見た感じも違えば、ときにはフィットも違ったりします。生地のクォリティ、縫い糸、パターン、裁断、プレス、そして縫いという過程を経るうちに、ところどころで個体差の芽は吹き出します。

数え切れないほど見てきた中で自分の気に入った一枚を見つけたときはやはりうれしいですが、それでも他人からすればただの独り言の世界。まあ、自分の場合は仕事に反映できるポイントが見つかったりと、ただの無駄にならないこともあるにはありますが。

さてこの2枚は多少年代の違うものですが、前半3カットで紹介したものが特に気に入っています。自分の場合、単に古ければいいというわけでもなくいろいろあったりして、この一枚はある過渡期に生産されたもの。そのせいもあってかポケットフラップの形や生地の質、そして全体のパターンやステッチの入れ方など、個体差や年代によるスペックの違いが偶然にも自分の好みに傾いたレアな(?)一枚となっています。まったくもって???ですよね。(オオフチ)