ニューヨークに住み始めて少し経った頃、週末になるとフリーマーケットで古着を売っていました。朝一でセットアップが終わると、とりあえずまわりのベンダーの持ってきた古着をチェックします。まずはワークウエアを中心に見ますが、アンテナのベクトルはオールジャンルに張り巡らされています。当時のNYには日本人の古着ディーラーはほとんどいなくて、かつアメリカ人のディーラーもハリウッド系などのわかりやすいアイテムをデザイナー用に探しているディーラーがほとんどだったので、自分の好きなジャンルの競争率は低かった。

そんなある日、通称“軍物ババア(失礼!)”と呼ばれる軍物に強いディーラーのブースでただならぬ妖気を放っていたのが、このハンティングジャケットです。一目で戦前物とわかる、ダークな色合いで目の詰まった良質のキャンバス地。チェンジポケット、さらに二層構造&パッチではない手の込んだカーブを持ったWウエルト付きのポケットが左右に付いているというディテールだけでも、すでに只者ではありません。アームまわりの仕立て具合や身頃のAラインの醸し出す雰囲気も、テイラードな印象が濃厚です。

そしてふと中を見ると、内側にショットシェル(薬莢)ベストらしき物が見えました。二枚重ねてハンガーに掛けてあるのかと思いきや、よく見ると前立ての裏に縫い付けてあります。後付けなのか? と思ってさらによく見てみると、どう見てもファクトリーの仕事です。う~ん、変わってます。こんなの後にも先にも見たことがありません。こんな一枚を見るとハンティングジャケット本来の、カントリー的にちょいと気取った性質が良くわかります。

比較的出入りの激しい私のワードローブですが、この一枚は今でもクローゼットの奥の方に隠してあります。出会いって不思議ですよね。(オオフチ)