今シーズン、Post O’Allsのいくつかのアイテムで展開しているネービーバックサテンの生地が気になっています。ウエイト的には2種類あり、アウター/プルオーバーシャツ用のヘビーウェイトと通常のシャツ用のミディアムウェイトとなっています。

写真:SB40

最近の日本で言うバックサテン(和製英語?)は、U.S.ARMYのM-65フィールドジャケットなどに 使われていたOD色のナイロン/コットンの混紡生地をコピーしたものが多いですが、今回うちで使っているのはブラックに近いU.S.NAVY様のネービー色で、100%コットンのよりクラシックなものとなっています。ビンテージ的に似たものとしては、第一次大戦頃のアメリカ陸軍のワークエアに使われていたブラックサテン、ビンテージのフレンチワークウエアなどに使われていたコットンサテンなどでしょうか。

何が気になるかと言えば・・・その“固さ“。特におろしたての頃はけっこう固い・・・のが久々に新鮮な気分なんです。 うちの場合で言えば、何しろここ10年くらいは生地に関しては出来る限りライトに、という方向性で来ていたので、固かったり厚かったりと馴染むのに時間のかかる生地は気が付けば疎遠になっていました。しかし、一昨年くらい前から”固い“生地がじわじわと再び気になり出してきたんですね。

写真:CRAFTMASTER 2

例えばキャンバスで言えば、 Post O’Allsが初期の頃に好んで使っていた“生”=糊でガチガチに固められた生地本来の姿=の12オンスキャンバスなどは、今どきビンテージものや資材用以外ではもうなかなか見ることはないですよね。うちもずいぶんと前から日和って8〜10オンスくらいまでのさほど固くないものに切り替えていきました。でも12オンスの生にはそれでしか味わえない、着込んでいった後の素晴らしい風合いがビッグなおまけとして付いてくるんですね。

12オンスキャンバスで生の場合、生地の張りがとても強く服自体で立ってしまうほどの仕上がりになるため、最初の頃はドレープ性が全くなく、板を着ている様な感じです。しかも顔料染めだったりすると、着る以前に扱ったり縫ったりしている時に生地の表面に無数に擦り傷のようなものが出来てしまい、現代の感覚でいえばB品になってしまう事も多いんです。かと言って、扱いやすくするために薬品を入れ洗いをかけて腰を砕いてしまった生地では、着込んでも生ほどに良い雰囲気になることはまず無いんですね。これは着込まれた現物を見れば明白にわかる差で、デニムでも生の方が洗い(薬品加工)のかかった製品よりも、確実にいい色落ちがするのと同じです。

写真:E-Z CRUZ 5

今回使用のネービーバックサテンもそんな使い勝手の悪い生地ですが、その代わり時間を掛けて馴染んだ時のムードは、おそらく生の12オンスキャンバスのように他では得られないメリットが出てくるような予感がしています。

と、現在は2017年FW物の企画の真っ最中ですが、また以前のように固くて扱いにくい生地もちらほらと差し込んでみたくなってきました。そしてそんなアイテムを長いこと着込んでみたいという欲求も同時に高まっています。気が付けば私自身、そんな原点回帰的なムードに惹かれているのかもしれませんね。
(オオフチ)