今日の3枚は、ビンテージと、それにインスパイアされた製品たちです。

写真①と②は、1940年代のFILSONのクルーザージャケットです。その長い歴史の中で変更を繰り返しながら現在も作り続けられているこのジャケット、もともとはアメリカ北西部の木こりや山間部で働く人たちがメインカスタマーで、その後一般にも普及していきました。

最初期である1910年代のプルオーバー型でポケットのアレンジが異なるタイプから現行品までの変遷を実物サンプルで見ていくと、最初期~初期はシャツ寄りのパターンとデザイン(台襟+チンスト付き)でチェーンステッチも未使用。
そしてバータック(カン止め)も使われていなく、スナップボタンもまだロゴの入らない小型の凡用タイプを使用しているなど、プリミティブな味わいを持っています。その後スナップにロゴが入り、チンストが取れて台襟のみになり、ポケットのディテールも少しずつ変わっていき、その後は写真のタイプに発展していきます。


個人的には台襟の取れたすぐ後であるこの写真のタイプが好きで、特徴的な撫で肩のパターンと相まって独特の着心地を持っています。この後の‘50~60s物になるとポケットのレイアウトも左右対称になり、スナップも刻印タイプに変わり、パターンやポケットのディテールなども徐々に変わっていきます。1970年代にはFILSON社自体が買収され、クルーザーも現代に続くデザイン、パターンへと変わっていきます。


写真③~⑥は、1970年代のPOLO製で、FILSONフレーバーにWOOLRICHフレーバー、そしてDAY’Sフレーバーをフュージョン。さらにニュートラ~ビバリーヒルズなトリートメントを施したPOLO独自の仕上がりになっています。



木こりがルーツでもこれだけリアルタイムにアレンジできてしまうのはさすが御大、初期(絶頂期?)のラルフローレンのバイブが伝わってきます。


しかも当時すでにアメリカーナな方向を目指しているところがまた凄いですよね。時代的に全盛であったポリエステルなどの合繊を使わないところもやはりへそ曲がりですよね。


写真⑦~⑧は、最近のPOST O’ALLSのCRUZERというモデルで、デザイン変更を繰り返したのち、ここ数年はFILSON的に里帰りした状況となっています。うちの場合は、一見当時に存在したように感じられるデザイン設定なので、イメージの調整はミニマルとなっています。


古着の面白さは未だ見ぬ物への興味とともに、その後のデザイナー達がどのようにインスパイアされていったかを見届ける楽しみもありますね。それらにくらべると、近代というか1980年代以降の服は、新しく登場したスタイルやテクノロジーを除くと、デザインやパターンまでどこかのコピーのそのまたコピーという物も多く、アメリカ的マーケティングの効果も手伝ってか、どことなく薄味に感じます。(オオフチ)