戦前から戦後にかけてのアメリカを代表するライターと言えば、New Jersey 州は Newark にあった RONSONだと思います。かつて作られた製品のデザインの変遷を見ていくと、当時のアメリカの流行とシンクロしていた事がよくわかります。昔の男の多くはタバコを吸っていたので、ライターも時計と並んで男のアクセサリーとしての役割も大きかったのでしょう。ファッションや車、建築や家具などと同様に、背後に優秀なデザイナーの存在が感じられます。

RONSONを代表するライターといえば、Standard。その最初期型は、1926年にデビューしたバンジョーモデルと入れ替わりに1927年にデビューしたDe-Light Standardです。これが、その後20年以上続くベストセラーモデルの原型で、メカニカルかつデコなデザインが特徴的です。

その、すぐ後…1920年代終わり〜1930年代始め頃のもの。デザイン的にはじわじわとメカっぽさが取れて、流線型になっていきます。これらは、Standard よりも小さい Princess というモデルです。

さらに小型な Junior モデル。1920年代終わり頃のもの。

1930年代前半〜後半頃の Princess と Standard。当時流行っていた、ストリームラインな感じが出ていますね。

1930年代後半〜戦後の Banker というモデル。Princess の縦長バージョンで、Banker=銀行家をイメージしたのでしょうか…良いサイズ感です。

第二次大戦頃のWhirlwindというモデル。Standard よりも大型で、出し入れ出来る風防が付いています。戦時下の1942年にデビューした、ヘビーデューティーでタンク容量の大きいモデル。

大戦中の Standard。戦時中は物資統制の為、ケースの材質がそれまでのブラスからスチールに変更されました。クロームメッキもあれば光沢のあるエナメル塗装、大戦中の ZIPPO のような結晶塗装のものもあります。塗装色はブラック、OD、グレーなどがあります。戦時中は軍のPXなどでしか購入できなかったようです。

大戦モデルのスチールケースは、下地がカッパーメッキになっています。その為、塗装やクロームが剥げるとまずカッパー色が出て、さらに剥げるとスチール色が出てきます。使い込まれると、独特で魅力的な味わいがありますね…。

戦後、RONSON ではなくて RAMA-SPIN という別ブランドで売られたもの。戦前の RONSON のエレガントで高級なイメージではなく、戦後に流行ったカジュアルで機能的な ZIPPO などを意識してマーケットされた故に、別名で売られたようです。ボデイはアルミのキャスト製でストリームラインなデザインが美しいです。

これも戦後に出た、スリムでおしゃれな Adonis というモデル。ストリームラインなデザインが、当時のハリウッド・ファッションに似合いそうですね。日本のライターメーカーが、戦後 Standard や Adonis のコピーモデルを作ってアメリカに大量に輸出して、日本の経済復興を助けたと言われています。

ここまでは全てオイルライターですが、その後1950年代中頃からは世界的にガスライターが台頭していきます。RONSON も1960年代くらいまではガスライターの名作をいくつかリリースして健闘していましたが、1970年代以降の100円ライターの時代を経て下降線をたどっていき、オリジナルのアメリカのオペレーションはやがて消滅、歴史の中に埋れていきました。現在日本で新品で販売されているものは、日本のライターメーカーによるライセンス生産もの、という状況です。諸行無常の鐘の声、という感じですね…。(オオフチ)