昭和20年代の匂いに興味があるのは以前書いたとおりだが、そのうま味のひとつに和物とアメリカ物のミックス具合が挙げられる。

今回紹介の映画は共に1956年の作品だが、昭和20sの香りに満ち溢れている。左側の英字題のものは邦題が“赤線地帯”で、当時の売春地帯を舞台にした映画である。

脇役の服装が見もので、“赤線地帯”に出てくるハウスのパシリ的存在のアンちゃんの格好はまさに昭和20s(前半?)のノリで、ニッカズボンにアーガイルソックス、そして革ジャンにチェックのハンチング。

ニッカズボンはこの年代のヤクザものによく出てくるアイテムのひとつで、スポーティさの中にもハクがある。問題は革ジャンで、バックペイント(しかもヌードのピンナップガール)の入った本物のA-2だ。当時は米軍とコネのあった人々がのして来た時代。そういった時代背景を感じさせる一枚だ。

また、“州崎パラダイス”のそばやのアンちゃんが着ているざっくりとロールアップした501XXと横縞Tシャツ、派手なチェッカーのソックスはまさに昭和20sのモダンなアンちゃんフレーバーといえる。割烹着のエリを立てた着こなしといい、彼の醸し出す雰囲気は遠い記憶の底にある昔の不良の匂いで、とても印象的だ。アメリカ製のGパンを既にはきこなしている様は都会的といえる。

この映画ではほかに当時のマンボズボンや正統派の夏のダボシャツ+ステテコの着こなしなども見られてさらに興味深い。(オオフチ)