最後に工場を出るのは工場長。工場が終わったら僕らも帰ることがほとんどですが、稀に鍵をかけるのが僕らのときがあります。
工場での残業ですね。たまにひとりだけになるときがあり、今日はまさにその日。

ひとりで作業をしていること自体つらくはないのですが、静かな環境で仕事をしていると些細な音でも気になるときがあります。人が居るはずがないのに気配を感じたり、隙間風のいたずらがノックする音に聞こえたり。
そんなときは無意識のうちに一応、裁ちハサミをパンツのバックポケットに入れ、勢いつけて扉をあけたことが何度あったことか……。
なんだ、誰もいないと、いつも自分の臆病さにも呆れます。

でも時々あるんです。何かを感じるときが。そんなときは音楽をかけて気を紛らわせたりしますが、それでも背筋がぞっと。その、ぞっとが首筋まで来て髪の毛が逆立った感じになると、早いです。さっさと仕舞って3分後には工場を出ちゃいます。これはちょっとした気分のメリハリをつけるのに丁度いい感じです。(カツ)