このデニムシャツは昔、まだ僕が日本に住んでいた頃に手に入れたもので、ある程度古い(‘30~‘40s)という点やビンテージNAVY物に見られるディテール(横使いの生地、袖上になるアームの縫製など)をのぞけばとりたててインパクトのない一枚ですが、何が気になったかといえばそのラベル。
ブランド名はBESTBILTですが、サブタイトルはBROOKLYNにあるSUBWAY TAILORという、NAVY御用達とおぼしきテーラー製です。NAVY物は古くから官給品以外にテーラーメードの物も多く、ブルーデニムの作業着にも多く見られます。

古着では、この手のNAVY系テーラーメードのデニム物はSAN DIEGOやSAN PEDOROなど西海岸製が目に付きますが、ニューヨーク、それもBROOKLYNというのは初めてでした(ラベルにはSAN DIEGO店の住所も書いてありますが)。
そんな事情と、BROOKLYNには古くからNAVY YARDがあったこともたまたま古い写真で見て知っていたので、ニューヨークに行ったらその住所にあるはずの店に行ってみたいと、密かに思っていました。もしかするとNAVY系のデッドストックがザックザク、自分のサイズも豊富に出たりして……。

その後NYに住み始め、あるときそのシャツのことを思い出し、いきなりラベルの住所をあてに地下鉄に乗って現地に行ってみると……。店は跡形もなく、それどころかその住所には巨大な、何棟もある団地形式の低所得者用らしきアパートが建っていました。ロケーション的にはBROOKLYN、NAVY YARDのゲートのすぐそばですが、少なく見積もっても1960年代後半に建てられたと思われるそのアパートの景観からは、往時にあったはずのNAVY商店街(ヨコスカ=ドブ板通りをイメージしていました)の面影はまったくなく、おまけに団地の公園にはガラの悪目な黒人の少年達も溜まっていて時折こちらを気にしています。

それまでの盛り上がりはどこへやら、スコーンとハズされた気分で寒空の下、夕暮れの街を手ブラ&冴えない感じで帰路についたことを覚えています。まったくトホホ、ですよね。まあ、こういったトリップにハズレはつきものなんでしょうが。(オオフチ)