ARMY SHIRT
私がビンテージ・ワークウエアに惹かれ始めた1980年代の始め頃、もっとも欲しかったものの一つが、Post O’Allsでアーミーシャツと呼んでいる、戦前のU.S. ARMYのブルーデニムのファティーグシャツ=プルオーバーで、胸の左右に大きな長方形のパッチポケットが付いたもの=でした。古いデニムの色合いが好きだったので、シャツもデニムが欲しい・・・でも、戦前もののデニムのワークシャツというものは、ほぼ存在しない・・・ということもありましたが、デザイン的にもジャケットとシャツの中間のような感じで、アイテム的にもユニーク、というのもあって、なにしろ着てみたかった。当時は、他に探しているライバルがほぼいないくらいにマイナーなアイテムでしたが、それでも渋谷の古着屋さんにお願いしてから見つけて頂くまで、一年くらいかかりました。このデザインのアーミーのファティーグシャツは、私が見たもので最も古いものが第一次大戦頃のカーキツイルのもので、その次は今で言う杢デニム、その後通常の綾デニムになってからは、ステッチの色がブラック→O Dやイエロー→白という変遷がありました。個人的にはたくさん着て、デッドストックも何枚も下ろしましたが、手元に残っているのはこの3枚。右から、綾デニムのブラック〜OD〜イエローステッチになります。
私が最も好きなタイプは、1920年代頃のブラックステッチ期のもの。生地も歴代最高レベルのクォリティで、それを際立たせるブラックステッチもかっこいい。また、縫製の感じもすごく良いものが多いです。ただ、この頃まではパターンが旧いので袖丈、着丈が短いのが弱点だと思います。うちのファーストバージョンのアーミーシャツは、この年代の良いものをいくつかサンプリングし、バランスを調整して仕上げています。
O Dステッチのもの。軍物なので、ミリタリー用の縫製糸を流用したのかもしれません。戦前物なので、OD色のトーンが第二次大戦時のものとは少し違う感じです。
そして、イエローステッチ。厳密に言えば、ODとイエロー混合のものもあったりします。そして、総じてイエローステッチ期のものは、なぜか縫製がひどいものも多いんですね。また、私はセットアップになるパンツを持っていたのですが、バックポケットがひとつの5ポケット(4ポケット?)のリーバイスのような型で、フロントポケットが袋ではなくて裏から共地のデニムのパッチをあてたデザインのものでした。ブラックステッチやそれ以前のパンツでも、後の白ステッチと同じ型のものを見たことがあるような気がするので、なぜイエローステッチ期のパンツはそのようなデザインなのか、未だに謎なんですね。余談になりますが、恐らく第一次大戦頃のUSアーミーのカバーオールジャケット(3ポケット)とツナギで、厚手のブラックサテン製のものを見たことがあるのですが、プルオーバーのシャツもあったのでしょうか?詳しい方がいたら、教えて頂きたいです。
最初に手に入れた、オールイエローステッチで小径ボタンの付いたもの。
その後は白ステッチになりますが、1930年代中頃以前のものはブラック〜OD〜イエローステッチまでのもの同様、生地に防縮加工が入っていません。その後の第二次大戦前までのものは、防縮加工がされている為か生地の風合いも違い、着丈が長いものが多い気がします。また、型紙も違う気がします。アーミーシャツは、年代や工場によっての個体差のブレ幅が大きく、パターン、縫製仕様、襟の形や大きさ、ポケットの大きさや付け位置など、いろいろ見ていくと、トータルで気に入ったものはあまり手元には残りませんでした。私の場合、レアであるという事よりも実際に着るもの、気に入った物だけが手元に残っていくという傾向にあり、やや後悔しています(笑)。
Post O’Allsでは1993年のブランドデビュー時から#1204 ARMY SHIRTという名前でアーミーシャツを作っていますが、2000年代のある時期からバージョンを変更しました。→過去ブログ
そして今、オリジナルの形やフィットを再びリリースしたくなってきました。現在企画中です!(オオフチ)